他人事を自分事に
2/23(土)は府中市市民活動センタープラッツで【たまケアLive vol.10】を開催!!
たまケアLiveとは糟谷が個人でやっている任意団体で、医療福祉の専門家とか一般の方とか関係なく、気軽にフラットな関係で話が出来るような場所を作ろうと、2015年から活動しています。メンバーは医師や看護師、歯科医師、理学療法士、ケアマネージャーなどの医療福祉の専門家と市民が一緒になって運営しています。
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記念すべき10回目を迎えた今回は、”他人事を自分事に”というテーマで、NPO法人ゆめのめ代表の大高美和さん、そしてNPO法人日本ホリスティック医学協会の金子節子さんをゲストにお迎えしました。
大高さんは障害を持つお子さんを持ちながら管理栄養士としての活動を行いながら、NPOの代表としても重症心身障害児のための居場所東京都指定障害児通所支援事業デイケアルームフローラを運営しています。当時、娘さんは保育園に通っていましたが、医療的ケアや重度の障害があるお友達は保育園、幼稚園にはなかなか通えなかったので、誰にでも通える居場所を創ろうと障害児サークルのママたちが立ち上げた事が今の活動のきっかけになったと大高さんはお話されていました。
サークルが立ち上がったものの、サークルだけでは普段の困り事が解決されません。そんな周りのお母さん達の困っている姿を見て、母だからこそ、困難の多いこの育児の理想の居場所が作れるんじゃないか。そう思うようになって、病院を退職、施設の管理者として働く事を決めました。
お母さん達の想いとして、『どんなに障害が重くても、子どもらしく遊べる居場所であって欲しい』という理想を掲げ、楽しいことをたくさん知ってほしい、お友達と一緒に過ごしてほしい、長時間預かってくれて、太陽の光いっぱい浴びて遊んでほしい。そんな場所を実現させたのがデイケアルームフローラ。大高さんはフローラで『子ども同士の関わりを大切に遊びながら育つ。』という事と、『みんなで食べて育つ。』という事を大事にしています。
障害児のための食事の進め方を家族は知らなくて、そもそも障害児の食事に関して教えてくれる人がいないと大高さんはお話されていました。ご自宅でも簡単に使えるような調理器具を使用すれば、選択肢が広がるという事を日本中飛び回って講演をされています。
胃ろうなど経管栄養の子どもにも家族と同じ食事の選択肢を。そんな想いを形にするために、本が出版されているので、ぜひ手に取ってみてくださいね。
大高さんはこれからも、子供同士の関わりを大切に遊びながら育つ、みんなで食べて育つという2つの軸を中心に、ゆめのめを通して1人でも多くの人が幸せになってもらえるよう活動を続けていききます。
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金子節子さんは、レビー小体型認知症と診断されたご主人をご自宅で2,000日寄り添い、看取りられました。診断された時の事や幻視の事、入院の代償があまりにも大きかった事をお話頂きました。
医師からレビー小体型認知症だという事を告げられた瞬間の事を金子さんはこう語っていました。
診察室から入って出るまで、一度も医師とは目が合わなったんです。レビー小体型認知症と告げただけで、その後の事などの話などは全くなく、結局目が合わないまま診察が終わった。せめて、医師としてどう寄り添ってくれるか、そんな一言が欲しかった。 と。
幻視に関しては実際にNHKで放映された映像を見せて下さり、テーブルの上に虫がいるいないで喧嘩になったりと、家族間での沢山の苦労が記録されていました。また、パーキンソン症状が出てきてだんだんと足が出なくなってきた時は、横について右足を出すよーっ声を掛けながら移動をしていました。ある日、いつものように声を掛けながら外を歩いていたら、突然様子が変わり、『どなたですか?私には妻がいるので、そんなに馴れ馴れしくしないで欲しい』と言われた事があったそうです。その瞬間、金子さんも気持ちが切れてしまい持っている荷物を道路に叩きつけて、その場を離れましたが、ふと我に帰りご主人の元に戻るというエピソードもお話して下さりました。
その他にも、歩いて入院したら退院時には寝たきり状態だったエピソードや、胃ろうチューブ洗浄にお酢を使った在宅看護師が、通常なら30倍で薄めるところ、3倍で薄めてしまい極度の脱水症状になってしまった時に、”あらごめんなさい”で済まされてしまった時のエピソードなどもリアルに語って下さりました。
これらの事象は医療者にとっては日常で慣れている事かもしれないけど、私たちにとっては非日常の出来事で何もかも初めての経験で不安だらけ。退院した夜は不安で不安でどうしようもなくなって、夜中にケアマネージャーに電話をしてしまった。この事を医療者には理解してもらいたいという金子さんのお話には強く胸を打たれました。
ご主人を看取られた後、金子さんは認知症おうちカフェキラリ★会を月1で開催しています。
自分が発信する事で、病気になる前から自分やご主人のような体験を知ってもらい、同じような苦労をして欲しくないという想いで始めたのが認知症カフェでした。始めは数名の参加でしたが、今では予約制になるほど人気のカフェになっています。
最後の4年間は自分がいつ食べたのか、いつ寝たのかもわからない日々を過ごし、ご主人を看取って我に返った時には髪は真っ白、身体はボロボロということに気づきました。そんな中、ミセスジャパンに出ないか?というオファーをもらい、世界大会では見事MRS JAPAN ASIA SUPREME PERSNALITY 2018を受賞。今後はミセスジャパンに出場する方達のサポートも行っていきます。
天国にいるご主人のためにも、自分を取りもどすチャレンジを1年ごとにして、年々自分らしさが戻ってきていると金子さんは仰っていました。
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自分や大切な誰かが病気になったら、
身体に障害が残ったら、
大好きだった人が、まるで別人のように見えてしまったら日常は一変するのかな。
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今回は参加者の半数以上が市民の方で、たまケアLiveが目指す形に近づけたのではないかなと思っています。
医療者は人の暮らしを知らずに、普段から患者さんや利用者さんと接しているケースが多い。その人やその人が暮らす街の朝や昼や夜ってどんな顔をしているんだろう。そんな視点を持って接してもらえたら、住んでいる街の”空気”は変わってくると思います。そして、市民には自分や家族が病気になった時に色んな選択肢を持って欲しい。どこに相談したら良いか分からず、不安になり、仕事を辞めたり、家族との間に溝ができたり、自分自身が壊れてしまったり、街にはそんな事がたくさん溢れている。今この瞬間にも誰もにも気付かれずに、地域の端っこで助けてって声を上げている人がいる。声を上げるのを諦めてしまっている人がいる。そんな人たちに色んな選択肢がある事を知ってもらいたい。
僕たちは、まずはそんな”空気”を作れたら良いなと思ってたまケアLiveをやってきました。
ほんの少しだけですが、そんな社会に近づけたのかなって思えたvol.10でした。
これからもみんなと一緒に創っていきたいと思っています。
これからもたまケアLiveを宜しくお願い致します!